教育法・法律を勉強していて思ったこと・知ったこと、教育法の階層体系など
2013年7月29日追記:「教育関係法規 体系」などで検索してこられる方がかなりいるようです。この記事は教育法規を網羅的に解説したものではありません(憲法から学習指導要領に至るまでの階層構造については解説しています)が、僕自身、教育法体系は勉強したいことですので、それなりの知識が得られたらまた別の記事を書きたいと思います。
「教育法」というと「教育に関する法体系」と「教育方法=教授法」の2つに取られそうでややこしい。この記事では前者について。
法令(=憲法+法律+政令+省令+告示 詳しくは後述)、条項数については略称を用います。
(たぶん)とある場合は、正しいかどうかわかりません。
ここに書いたようなことを義務教育で教えると、中学生とかはスッキリするんじゃないかな、と思いました。法律って具体的にどうやって動いてんの?ってことを知らないから「政治わかんなーい」ってなるんだと思いました。
ウチの大学の人向け:冬学期月曜1限「教育法」の授業を取りましょう!1限だけど楽しかったよ!
法律全体を通して思うこと
- 結構現場の裁量に任されていたりする
- 憲法・法律に書かれてることって抽象的過ぎて意味わからん→
法律・条文の読み方
教育法体系
読み方
- 条文を読むときには何が主語であるのかに注意
- 「地方公共団体」は「地方議会が制定する条例によって」という意味
- 「地方公共団体の長」は「首長」のこと
- 「〜は、…を管理し、及び執行する」って具体的にどういう権限のことなんだろうか
- 「法的根拠がある」=「憲法・法律・政令に規定がある」
- 「法的根拠がある」と言っても、「〜ことができる(可能)」、「〜しなければならない(義務)」、「〜努めなければならない(努力義務)」というように、法的拘束力には種類がある
- 「文部科学大臣が〜する」とあっても、実際に事務を行なっているのはお役人さんで、文科大臣はまとめられた文章を読んでハンコを押してるだけ(だと思う、というかそうじゃないと仕事が務まらないと思うから、非難すべきことではない)
- 例えば、学校の生徒の指導・評価をするのは先生だが、卒業を認定するのは校長である
- 「文部科学大臣が定める」とあった場合は、文部科学省の省令として施行規則・施行令などが制定されている
法律の運用
- 予算が出ていても、それには法的根拠がないこともある
- ある法律・施行規則の条項がいつ増えたのか知りたい→
- D1-Law.com 第一法規法情報総合データベース
- ただしここは有料なので、大学のアクセスサービスを使うと良い
- ただ、教育基本法とか重要な法律には文科省のページにあったりする→学校教育法等の一部を改正する法律(平成19年法律第96号)の施行に伴う関係政令・省令・告示の整備:文部科学省
各法律について
教職員について
- 教職員=教員+職員
- 関連する法令(略称)
- 教育基本法9条
- 学校教育法
- 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)
- 教育職員免許法
- 地方公務員法
- 教育公務員特例法
- 市町村立学校職員給与負担法
- 学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教職員の人材確保に関する特別措置法(人確法)
- 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)
- 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(義務教育標準法)→高校標準法も存在している
- 教職員は地方公務員 ただし非常勤講師や非常勤の学校医等は適用なし
- 教職員の同一学校での勤続年数に法律上の規定はない。ただし通常は教育委員会によって人事異動の方針に関する通知が毎年出され、それに基づいて異動が行われる(根拠はおそらく教育委員会規則)。通知内容は県ごとに異なるが、大抵の場合は同一校での勤続年数に上限が設けられていると思う。
- 公立学校の教員の採用は都道府県教育委員会か指定都市教育委員会単位で行う
- 教育職員免許状は全国の都道府県・指定都市で有効だが、採用・人事権は自治体ごと
- よって、地方公務員という扱い
- 私立学校は学校ごとに採用
- 国立学校(国立大学付属学校)の教員は国立大学法人によって採用され、地方公務員にはあたらない(当然ながら教員免許は必要)。公立学校の教員と違い労働三権も保障されている。ただし、学校が所在する県の教員との人事交流は結構行われている。日本教育大学協会の「国立大学・学部の附属学校園に関する調査」が参考になるかも。
- 教育職員免許状
その他
- 「通学学区」には法的根拠はない
- ただし、各自治体が独自に教育委員会規則を定めている場合には法的根拠があるといえる。→稲城市公立学校学区に関する規則
- 「学習指導要領」には法的拘束力がある(=義務)
- ただし平成15年からいわゆる「歯止め規定」が一部を除き外され、指導要領は教えるべき「最低基準」であるとされた
- 授業時数は「標準」であり、多少の増減は許される(学校教育法施行規則51条)
- 単位制を採用する高校は、卒業単位さえ満たしていれば卒業できるので、1日6時間毎日、3年間通っていたら卒業単位を大幅にオーバーしてる(たぶん)本当は空きコマとかあっても十分足りる(たぶん)
旭川学テ事件に関する疑問
判決全文→旭川学テ事件、最高裁大法廷判決
- 最高裁判決では、地教行法53条、54条との関連から、文部大臣は学力テストを地方教育委員会に行わせることはできないとしている
- しかし実際は、旭川市教育委員会の管轄である旭川市立の中学校で学力テストの実施を決定した
- これは違法ではない→なぜなら、旭川市教育委員会は文部大臣の要請に従う義務はないが、実施すること自体は違法ではない。やりたくない場合に断れば良いだけの話である。
- では、文部大臣が地方教育委員会にまるで学力テストの実施義務があるかのような通達を出したことは適法であったのか?何らかの補償(?)を行うべきではないのか?
大阪市立桜宮高等学校の体育科入試中止に関する疑問
- 入試の実施権限は大阪市教育委員会にある(根拠はたぶん以下)
- 教育委員会の予算執行権限は首長にある(根拠はたぶん以下)
- では、大阪府教育委員会が決定した入試実施の予算(給与ではない)を大阪市長は停止することはできるのか?
- 予算権とは何か
ちなみに、大阪市立桜宮高等学校は指定都市である大阪市が設置する市立高校なので、教職員の給与は大阪市が負担する。(市町村立学校職員給与負担法2条)(通常は県が負担する→同2条)
謝辞
mac_wacさん、コメントありがとうございます。加筆・修正を加えました。